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대장금3부 일본

by 작은집 큰행복 2025. 11. 30.
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世の中のあらゆる悲劇を背にしながら、幼いチャングムは、
徳九(トック)おじさんの家に身を寄せておりました。

父は忽然と姿を消し、母はもう二度と戻らぬ道へ旅立ってしまった。
その小さな肩に背負わされた悲しみと秘密の重さは、
あまりにも過酷でございました。


ある真っ暗な夜のことでございます。
深い山里を離れ、町外れに移って間もない頃であったため、
チャングムは些細な物音にも敏感になっておりました。

徳九おじさんは、毎晩のように濁酒をあおり、
その酔いに身を任せて深い眠りに落ちておりましたが、
この家の実質的な支えであり、
不運の影を全身で受け止めていた徳九おばさんは違いました。

彼女はぐっすり眠るということがほとんどなく、
獣の気配ひとつでも雷のように跳ね起きる
鋭い神経を持っていたのです。

――その夜でした。

塀の向こうから、
枝の折れる「パキッ」という音が聞こえてまいりました。

ただの獣にしては、あまりにも不自然で、
どこか切迫した匂いのする気配……。

徳九おばさんはすでに布団を蹴飛ばし、
台所の隅に立てかけてあった棒をつかんでおりました。

彼女は、
「王室の罪人を匿(かくま)った家」として、
いつ官兵や捕り手たちに見つかるかもしれないという
恐怖を胸の奥で育てながら生きてきたのです。

長年の不安で鍛えられてはいたものの、
それでも恐怖は重く心を押しつぶしました。


やがて、泥棒は徳九家の庭先へ足を踏み入れました。

薄汚れた衣をまとった一人の男――
灯りも持たぬ闇の中でも分かるほど、
飢えと疲れに追い詰められた哀れな姿でございました。

身なりはみすぼらしいが、
ただの下層民というより、
どこか高い身分から転落してきた知識人のような、
そんな“落差の痛み”が漂っておりました。


徳九おばさんは雷のような怒声をあげ、
男の前に躍り出ました。

その怒りは単なる「盗み」に向けられたものではありません。

この家の平穏を破り、
チャングムの身に迫る運命の影を呼び込む行為――
その敷居を踏み越えた者への怒りでございました。

「何のつもりだい!
 この家に飯粒ひとつ残っているとでも思って
 盗みに来たってのかい!」

夜気を切り裂くその声は、
霜柱のように鋭く、冷たく響きました。


男は棒の前にひざまずき、必死に訴えました。

「どうか……どうかお許しを。
 私は盗人などではございません。
 もとは真っ当な民でございましたが、
 権力の横暴によって身を落とし、
 命のために穀物を一握り……
 それだけが欲しかったのです……。」

飢えと疲労と、そして深い悲しみが
男の声にじわりと滲んでおりました。


徳九おばさんは、
当然のようにこの男を役所に突き出そうと考えました。
しかし、その時――

幼いチャングムは静かにその場に立っておりました。

暗闇の中でも分かるその瞳の光は、
単なる同情ではありませんでした。
それは、母の教えを思い出した証の光でございました。

母の遺した言葉――
「人は飯で生きる。
 飯をつくる者は、人の命を救う者だ。」

チャングムは震える手で台所へ走りました。

かすかに残った冷たいご飯、
昨日の残りのスープ――
それらをきちんと器に盛りつけ、
そっと男の前へ差し出したのです。

その小さな手の所作には、
亡き母が教えた“スラッカン(宮中厨房)”の品位が
微かに宿っておりました。


男はむさぼるように、しかし涙をこぼしながら食べました。

それは空腹の涙ではなく――
冷たい世の中で初めて受け取った、
“温かい人情”への涙であったのかもしれません。


徳九おばさんは憤慨して舌打ちをしました。

「この子ったら……!
 うちには粥すら残っちゃいないのに、
 盗人に飯を恵むなんて、どういうつもりだい!」

しかしチャングムは、
年齢に似つかわしくない落ち着いた声で答えました。

「私はたとえ下々の者であっても、
 飢えた命を見捨てることはできません。」

その言葉に徳九おばさんは、
やがて棒を下ろし、ため息をつきました。

「……まったく、この子は“ただの子”じゃないよ。」

チャングムの眸の奥に宿る芯の強さ――
それはやがて、彼女を王宮へ導く宿命そのものだったのです。

 

翌朝。
徳九おじさんは酒の酔いから覚め、
庭先で飯を食べている“盗人”の姿を見て
顔を真っ赤にして怒り狂いました。

しかし、その男が漏らしたたった数語の言葉が、
徳九おじさんの血の気を一瞬で引かせました。


男は、ただの盗人ではありませんでした。

彼は――
チャングムの父・徐天守、
そして母・朴氏を追い詰めた
“崔尚宮一派”の陰謀に
間接的に巻き込まれた政治的逃亡者だったのです。

この男を匿ったという事実は、
すなわち再び宮廷の黒い争いへ足を踏み入れたのと同じ。
すなわち――
**「大逆罪」**にも等しい重罪。

徳九おじさんは蒼白になり、震える声で叫びました。

「お、お前のせいで……
 うちの家族がまるごと皆殺しになるところだったんだぞ!
 こいつを匿(かくま)った罪――
 俺が代わりに背負わされるんだ!」

徳九おじさんは、
恐怖と混乱をごまかすように言葉を続けました。

「チャングム、お前は今日の借りを
 “一生の借金”として返してもらうからな!
 いいか、うちにいる限り、
 お前は“家の下働き”だ!
 逃げようなんて考えるなよ!」


チャングムは黙ってその言葉を受け入れました。

母を失い、ひとり残された彼女にとって、
徳九家の雑用は苦しみではなく――
“生きるための新しい鎖(くさり)”であり、
宮廷の追っ手から身を守ってくれる
一種の“安全な檻”でもありました。

 

チャングムは毎日、夜明け前に起きて
薪を背負い、井戸水を汲み、
腰を痛めた徳九おばさんの温罨法(おんあんぽう/身体を温める手当)をし、
掃除、洗濯、炊事……
無数の雑用をこなさねばなりませんでした。

その幼い手は次第に固い“まめ”で覆われ、
かつてのあどけない笑顔の代わりに、
痛みに耐える静かな忍耐が宿りました。

しかし――
チャングムはその苦行の中にも
**“母が残した教え”**を忘れませんでした。

「これは……
 スラッカンの最高尚宮になるための修行だ。
 ご飯を炊くことも、火を扱うことも、
 全ては母が歩んだ道を私も歩むための基礎……。」

炒め物の音、煮える湯気、薪のくべ方。
彼女はそれを“料理の学び”として吸い込み、
目で見て、鼻で嗅ぎ、手で感じながら
感覚を磨き続けました。


徳九おばさんは
最初こそチャングムを厄介者と思っていたものの、
次第にその健気さと、
澄み切った芯の強さに心を動かされていきました。

夜になると、
こっそり無名布(むみょうふ/安物の布)を縫い合わせて
チャングムに着せる衣を作ってやり、
酔いに任せて怒鳴る徳九おじさんから
身を挺して守ってやることもしばしばでした。


 

チャングムは思いました。

――この借金の鎖に囚われていても、
  母の遺言は消えない。

――私は必ず宮中へ戻る。
  最高尚宮となり、
  母の無念を晴らす。

それは幼い少女には重すぎる誓いでした。

しかしチャングムの胸の奥で、
その誓いは静かに、しかし力強く燃え続けていたのです。

 

ある日、
チャングムの運命を大きく揺るがす出来事が訪れました。

その日も徳九(とっく)おじさんは酒に酔い、
チャングムに荒々しく言いつけました。

「おい、チャングム!
 街はずれの“秘密の酒席”まで
 この酒を持っていって来い!
 今夜は偉いお方たちの“補養の宴”があるんだ!」

チャングムは、
重い酒壺を胸に抱え、
よろめきながらも使命を果たすため歩き始めました。


 

その酒席は、
表向きはただの大きな居酒屋でしたが――
実際は 朝廷の極秘が行き交う“陰謀の中枢” でした。

そこには、

  • 吏曹判書(りそう はんしょ)・柳順汀(ユ・スンジョン)
  • 司僕寺(さぼくし)・添丁(てんてい)・洪貞浩(ホン・ジョンホ)

など、朝廷の実力者たちが密かに集まっていました。

彼らが話していたのは、
宴でも補養でもなく――

「中宗反正(ちゅうそう・はんせい)」
すなわち王を取り替える計画でした。


チャングムはもちろん
その内容の意味を理解していませんでした。

彼女はただ、
「この仕事をうまくやれば、
 いつか本当に“宮女(きゅうじょ)”になれるかもしれない」
――そんな小さな希望だけを抱いていました。


 

そこで、
酒場の主人が静かに言いました。

「大監さま……
 あの子をご覧くださいませ。
 背は低く、身なりも質素、
 ただの“酒売りの小娘”にしか見えません。

 誰も、あの子が密書を運ぶなどとは夢にも思わぬでしょう。」

居並ぶ権力者たちが
チャングムを見つめました。

その瞳は――
人としての優しさではなく、
“利用価値”を計る冷たい政治家の目でした。

そして彼らは決断しました。

反正(はんせい)開始の“最終暗号”を
チャングムに託すことを。


 

酒場の主人は
チャングムにそっと紙片を渡しました。

「チャングムや。
 これを“朴元宗(パク・ウォンジョン)大監”に届けなさい。
 聞かれたら “補養料理のお代” と言えばよい。

 そして、この四文字を“順番どおりに”
 大監さまに読み上げるのだよ。」

チャングムの胸が跳ねました。

“宮女になりたい”という言葉が
彼女の目の奥で輝いていました。

「はい……! 必ず届けます!」

幼い彼女は知らなかったのです。

その小さな口からこぼれる四文字が――
王朝の未来を塗り替え、
数多の血を呼ぶ引き金になるということを。


 

朴元宗の屋敷は圧倒的に巨大で、
門は空を突くようにそびえ、
家臣たちが息を合わせて動き回っていました。

チャングムの胸は緊張と期待で震えました。

「ここが……
 母さまが生きた世界とつながる場所……。」

やがて朴元宗大監が姿を見せました。
その眼差しは穏やかでありながら、
剣のような鋭さを湛えていました。

大監は密書を受け取り、
チャングムを見つめて静かに問いかけました。

「……宮女になりたいのか?」

チャングムは胸の前で拳を握りました。

「はい。
 どうか、どうか宮女に……。」

その表情は、
幼いながらも“決意”に満ちていました。


 

朴元宗大監は、
封を切らず密書を差し出しました。

「よい。
 ではお前が、その四文字を読んでみよ。」

チャングムは
酒場の主人から教え込まれた通り、
ゆっくりと読み上げました。

「昌(しょう) 天(てん) 期(き) 事(じ)。
 皇(こう) 天(てん) 蕩(とう) 命(めい)。」

その瞬間――
朴元宗大監の顔から血の気が引きました。

この四文字は表向きには
「天が時を望み、王命が奸臣を払い除く」
という意味を装っていましたが……

実際は、

「王を替えて反正を開始せよ」
という、決定的な暗号だったのです。


さらに大監は、
決行の可否を測るための“最終質問”を投げかけました。

「その酒場の主には……
 なんと返すつもりだ?」

チャングムは純粋な笑顔で答えました。

「“ありがたく受け取り、
 深い思案をされたと伝えよ”
 と……言われました。」

朴元宗大監は震える手で膝を叩きました。

それこそが、
 反正決行を約束する最後の合図だったからです。


チャングムは何も知らぬまま、
“王を変える密命”を完璧に届け、
歴史を動かしてしまったのです。

彼女の幼い足取りの裏で、
朝鮮王朝の巨大な車輪が
ごうん――と動き始めました。

 

―「少女が運んだ密命、そして揺れ動く朝廷」―


チャングムは、大監から受け取った重い銭袋を抱え、
胸を高鳴らせながら徳九(とっく)家へ戻っていました。

「これで……
 私はいつか必ず、宮女になれる……!」

しかしチャングムは気づいていませんでした。
自分の小さな足が、
**“中宗反正(ちゅうそう・はんせい)”**という
巨大な政変の引き金を引いてしまったことを。

彼女はただ――
母の遺言を胸に、
宮女となる道を夢見ていたに過ぎませんでした。


 

チャングムの帰りを待っていた徳九おじさんと徳九おばさん。
二人はチャングムを叱りつけるかと思いきや、
その手から落ちるほどの銭袋を見て目を丸くしました。

徳九おじさんは、酔いも覚めたように声を荒げました。

「お、おい……!
 なんでこんな大金を……!
 お前、どこで何をしてきた!」

しかし徳九おばさんは
チャングムの小さな手を握りしめて震えました。

「この子……
 この年で、こんな大きな仕事を……。」

それは叱責ではなく、
心の底から湧き上がった母心のようなものでした。


 

徳九おばさんは
チャングムの願い――
「宮女になりたい」という純粋な夢を
以前から聞いていました。

だが、宮中という世界がどれほど厳しく、冷たいかを
よく知っていたからこそ、不安で胸が潰れそうでした。

彼女は
まだ幼いチャングムの手を取り、
涙ぐみながら言いました。

「チャングム……
 お前がそれほどまでに宮女になりたいと言うなら
 私が止めることはできない。

 だがな……
 宮中というところは、
 外から見れば絹のように美しいが、
 中は刀より鋭い世界だよ。」

その言葉の奥には
“もうすぐ別れが来る”という直感がありました。


 

徳九おばさんは
自分の嫁入りの時にこっそり残しておいた
**薄い絹のチマ(裳)**を取り出しました。

そしてもうひとつ、
彼女の母から譲り受けた小さな**玉のノリゲ(飾り)**を
震える手でチャングムの掌にのせました。

「これを持って行きなさい。
 もし、誰かに“身分”を問われたら……

 『私の母は宮外の行首(へんす)でした』
 ――そう言いなさい。

 本当のことを言えば、お前は生き残れない。」

その声には
まるでチャングムを実の娘のように思う
深い愛情と痛みが宿っていました。

チャングムは涙をこらえて深々と頭を下げました。

「ありがとうございます……
 私は、必ず母の遺言を果たします。」

そして彼女は静かに徳九家を後にしました。


 

宮中の門をくぐった瞬間、
チャングムは息をのみました。

そこは
華やかさとは裏腹に、
冷たく、規律に満ちた異世界でした。

廊下に響く足音。
張り詰めた沈黙。
石壁をかすめる風の音。

「ここが……
 母さまが生きた場所……。」

胸が震えました。

だがその震えは、
畏れと期待と――
そして“身分を隠して生きる緊張”が混ざった
複雑なものでした。


 

そこには
チャングムと同じ年頃の少女たちが並んでいました。

彼女たちは皆、
綺麗な衣をまとい、白く柔らかな手を持ち、
礼儀作法も完璧でした。

彼女たちのほとんどは、
名家の娘か、官職を持つ家の子女。

その中で、
山村で働きづめの生活をしてきたチャングムの手は
硬く、ひび割れていました。

チャングムは
そっと手を袖の中に隠しました。

(私は……
 誰よりも完璧にふるまわなければならない。
 少しでも疑われたら……終わりだ。)


 

ナイン候補生の教育を担当したのは
あの権力者、**崔尚宮(チェ・サングン)**でした。

彼女は鋭い目で少女たちを見渡し、
厳しい声で言い放ちました。

「よいか。
 ここは“女の家(おんなのいえ)”ではない。

 “宮中記女家(きゅうちゅう き じょか)”、
 すなわち――
 **『職務を持った女の官職』**だ。」

少女たちが息をのみました。

崔尚宮はさらに続けました。

「宮女とは、
 王と王妃に仕える者であると同時に、
 国家の根幹を支える“女の官吏”である。

 身分の低い者は……
 本来ここに立つ資格すらない。」

その言葉は
矢のようにチャングムの胸に突き刺さりました。

(私の身分が知られたら……
 私はここにいる資格すらない……。)

彼女は唇を強く噛みしめました。

 

 

チャングムが入宮してから、
わずか一ヶ月も経たない頃でした。

昼は崔尚宮(チェ・サングン)の厳しい礼法教育。
夜になると、
彼女は 退膳間(テソンガン) に呼び出されました。

ここは
王に差し上げる夜食――
夜膳(ヤソン) を整える、
極めて緊迫した“戦場”のような場所でした。

火鉢の熱、
湯気のこもる湿気、
張り詰めた沈黙。

わずかな失敗が
**不忠(ふちゅう)・逆心(ぎゃくしん)**として処罰される世界。

チャングムはただ
布を敷き、
器を温め、
米を研ぐだけの下働きでしたが――

(ここでの一つ一つが母の教えだ。
 火の強さ、湯の音、
 米の軟らかさ……
 すべて宮女としての修行。)

そう自分に言い聞かせ、
決して怠らず、
必死に動き続けました。

周りの少女たちは
彼女の“異常な集中力”を
奇妙な目で見つめていました。


 

深夜。
空はまだ真っ暗。

王に運ぶ 夜膳の御膳(みけん) が準備され、
上級のナインと補佐の尚宮が
慎重に廊下を進んでいきました。

チャングムは
いつものように後ろから
膳が揺れないよう緊張しながらついて行きました。

廊下には
冷たい石の匂い。
足音だけが響く静寂。

そのときです。

廊下の角を曲がったところで、
チャングムは “ある男” を見ました。

その姿に――
時間が止まりました。

彼こそ、
かつて母が密かに想いを寄せた青年。
今では生進試(しょうしんし)に合格し、
**科挙の首席(しゅせき)**として入宮した若き官吏。

チャングムは思わず立ち止まり、
胸の奥底が揺さぶられました。

(お母さま……
 あの方……。)

そして
無意識に
母の形見である 玉のノリゲ を握りしめました。

ほんの“一瞬”。
しかしその一瞬が――
すべてを変えました。


 

「パリンッ!」

王の御膳が床に砕けた

先を歩いていた補佐の尚宮は
眠気と緊張で足元がふらついていました。

その瞬間、
チャングムが立ち止まったことで
距離感が狂い、
補佐尚宮は驚いてバランスを崩しました。

そして――

コォォォン!

白磁の器が廊下で砕け散り、
 熱い玉米粥(ぎょくべいゆ)が
 石床に飛び散りました。

しぶきは
尚宮の足袋にも、
膳の布にも、
廊下にも広がりました。

退膳間にいた者たちは叫びました。

「だ、誰だ!?
 王の夜膳を……王のお食事を落としたのは誰だ!!」

その声は
恐怖と狂乱に満ちていました。

“王の夜膳を落とす”など、
 死罪に発展しかねない重罪だったからです。


 

補佐の尚宮は震えながら叫びました。

「ち、違います!
 私ではありません!

 あの新入りの子が……
 廊下の真ん中に立っていたのです!
 そ、それで私が驚いて……!」

他のナインたちも
恐怖に駆られて声を上げました。

「そうだ! あの子のせいだ!」
「新参者が規律を知らなかったからだ!」
「罰はあの子に! 私たちは何も見ていません!」

人々は
“自分が罰を受けたくない”という
動物的な恐怖で
チャングムひとりにすべてを押し付けました。

チャングムは声も出せず
その場に立ち尽くしました。

(私の……せい……?
 違う……違う……
 でも……どう言えば……)

胸が締めつけられ、
呼吸ができませんでした。


 

―冷酷な審判者―

そのとき。

コツ……コツ……
と重い足音が近づいてきました。

退膳間の全員が凍りつきました。

主事尚宮(チュササングン)
――この場の最高責任者。
冷徹で知られた女官でした。

彼女は砕けた白磁と
こぼれた粥をじっと見つめた後、
抑揚のない声で問いました。

「王の夜膳を落とした者は、誰だ。」

沈黙。

次の瞬間、
補佐尚宮が震える指で
チャングムを指差しました。

「ま、ママ……!
 あの子です!
 あの新入りが廊下の真ん中に……!」

チャングムの心臓が止まりました。

主事尚宮の視線が
ゆっくりとチャングムに向けられました。

「……おまえの名は?」

「……チャングム……でございます……。」

「どこの出身か。」

その問いは――
彼女のすべてを暴く刃でした。

チャングムの唇は震え、
声は出ませんでした。

(い、言えない……
 私が百姓……
 まして“白丁(はくてい)の娘”だなんて……
 ここで明かせば……死ぬ。)

静まり返った廊下に
主事尚宮の冷たい声が響いた。

「黙したままでは罪を認めたのと同じだ。」

チャングムの運命は
いよいよ奈落へ転がり始めていました。

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